【京主】観葉植物 ※未完

ジャンル:東京魔人学園剣風帖 お題:私の木 必須要素:栓抜き 制限時間:30分 文字数:735字


「♪~」
 ひーちゃんが珍しく鼻歌を歌っている。
 いつものごとくひーちゃんの手料理の晩飯をご相伴にあずかり、食器の片付けだけを手伝わされた後、ソファに背をもたれくつろいでいる間も、ひーちゃんは掃除機をかけたり、俺が散らかした雑誌の整理をしたりと、「これ、もう新婚生活って言ってもいいよな……」と心のなかでニヤニヤしているが、そういうことを言うとケリを入れられるので機嫌のいい時にのみ言うことにしている。機嫌のいい時に言ったとしても、龍星脚が普通のケリになるだけなんだけどよ。

「なんか、今日はひーちゃんいいことあったんかよ?」
「え?」
 窓際の観葉植物に水をやっているひーちゃんに声をかけると、水の入った霧吹きを持ちながら振り返る。

「そうか?」
 いつもと変わらぬ口調だが確かに何か嬉しそうだ。

「鼻歌なんか歌ってよ、普段はそんなことしねぇじゃねェか」
「あ、うるさかったか?」

「ひーちゃんの鼻歌がうるせぇわけねェだろ。さやかちゃんの歌声くらい心地いいぜ」
「恥ずかしいこと言うなバカ!」
 本心からそう言うと、ひーちゃんはつかつかと近寄ってきて軽く左足に蹴りを入れてきた。
 恥ずかしがり屋なところもかわいいぜ、ひーちゃん。と思ったが、それを言うと火に油だ。

 もちろん本気のケリでもなんでもないので痛くもなんともないが、ひーちゃんに蹴られるのは悪くない。って言うと何か変に聞こえるかもしれねぇが、一度ひーちゃんのケリを受けてみればわかる。清廉な氣が体に纏わり付きながら通り過ぎて行く感覚。ひーちゃんにワザとケリを入れられそうになったり小突かれそうなことを言いたくなるのもこのせいだと思う。決して俺がそういう性癖を持っているわけではない、と思う。


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