【京主】昼下がりの求婚

ジャンル:東京魔人学園剣風帖 お題:昼間の結婚 制限時間:1時間 文字数:1051字


「龍麻ッ!!!」
 京一が俺を「龍麻」と呼ぶときは、友好値が低い時か、何か俺に真剣に伝えたいことがあるときだ。

「何だ?」
 俺はリビングのソファで午後のまどろみを楽しみながら今晩の献立などを考えていたところだったのだが、京一が目の前に立ちちょうど窓からの逆光になって表情は陰っているがそれでも何かを言おうとしているのはわかるので、いつもより真剣なトーンで返事をした。

「龍麻……」
 もう一度名前を読みかけたあとこちらを真剣な顔で見つめてくる。
 京一の真剣な顔は嫌いではない。むしろ好きだ。普段はヘラヘラと相好を崩し「ひーちゃんひーちゃん」と纏わりつき、年々そういう顔を見ることは少なくなってきた。

「なんだ?」
「結婚しよう」
「ああ。わかった」
 結婚、結婚ね……。年齢的に言えばそういうことを考えてもいいというか、付き合いも15年以上になるしもう結婚しているようなものだと思っていたが、そういうパートナシップの形を取るのも悪くないだろう。そう思い、間を置くことなく答えたのだが今度は京一が黙ってしまった。

「京一?」
 訝しんでいると、京一は膝を折り、俺の座るソファーに腕をかけ、俺の膝に顔をうずめてくる。
「龍麻ァ。男同士は結婚できねぇだろ……なんだよそのひとつ返事は……」
「なんだよ。了承したのにどうして文句を言われないといけないんだ」

「ひとつ返事されるとは思ってなかったからよぉ……どうやって龍麻を口説くかばかり考えてたんだよッ」
 なんだその八つ当たりは……。
「俺たち何年の付き合いなんだよ。俺が京一から求婚されて断るとでも思ってたのか?」
「龍麻のリンリカン[#「リンリカン」に傍点]から考えてそんな答えが帰ってくるとは思ってなかったんだよ」
「早とちりだな。人間の関係性は本人が決めるものなんだ。結婚だって同じだ。京一からは俺はお堅い人間に映るのかもしれないけどな、そんなこともない」
「あー……まだまだひーちゃんのことわかってねぇなぁ……俺」
「まぁでも、結婚してたとしても、ヤることヤってても俺たちじゃ子供ができないのは寂しいなぁ……とかは思うんだぜ」

「そうかッ。それじゃぁ結婚の前に子作りだなッ」
 京一の顔がパッと明るくなって下から見上げてくる。
「そういうことじゃない」
「諦めるなよ。ひーちゃんならもしかしたらできるかもしれねぇぜ」
 そう言いながら、俺の股間をもぞもぞと触りだす京一の頭を叩き、今晩のメニューはシチューにしようと思うのだった。


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