棘 【五年生乱交直前】

ジャンル:忍たま乱太郎 お題:突然の血 制限時間:1時間 文字数:1570字


「痛っ ……棘が刺さっちゃった」
 久々知兵助は後ろ手をつくために床板に手を置いた瞬間痛みを感じ、手を見ると小さな棘が刺さっていた。

「大丈夫か? 兵助」
 こういう時に真っ先に反応をするのは竹谷八左ヱ門である。兵助の手を取って検分する。

 五年い組の忍たま長屋の一室に、久々知兵助、尾浜勘右衛門、鉢屋三郎、不破雷蔵、竹谷八左ヱ門のいつもの五人がそろって其々《それぞれ》が其々の体の一部に何処かが触れるくらいには密着した状態で今日あったことなどを話しながら寛いでいた最中に先ほどの兵助棘事件である。

「大丈夫だよ」
 という兵助の言葉を聞きつつ、八左ヱ門は兵助の右人差し指の先に刺さった棘を見つけると、
「これか。取ってやるからな!」
 兵助の指先を掴み、刺さった棘を外に出すために力を込める。

「八左ヱ門。自分で取れるから……」
 聞く耳を持たず状態で兵助の指を左手で圧迫しながら出かかっている棘を右手の人差し指と親指で摘もうと集中している。

 他の三人はその様子を眺めながらも其々もたれ掛かったり、手で体を気まぐれに弄ったり、普段からこの五人だけになると見られる接触をしている。実に憩いの刻である。

「おしっ! 取れた!!」
 八左ヱ門が兵助の指に刺さった棘を自分の手に持ちながら声を上げる。それを縁側から続く庭に向かい捨てる。
「ありがとう。八左ヱ門」
 棘の抜けた自分の手を見ながら微笑む。

「あ、血が出てきた」
 棘が抜けた小さな手の穴から血が滲み出てくる。
 とっさに口に手を入れて舐め取ろうとした瞬間、今まで隣でくっついていた勘右衛門がひょいと兵助の手を掴み、棘の刺さっていた人差し指の先を自分の口の中に入れる。

「勘右衛門!」
 兵助とそれを見ていた八左ヱ門が同じ拍子で声を上げる。
「ふぇいすけのちのあび……」
 「兵助の血の味」と言いたいのだろう勘右衛門が兵助の指を咥えたまま喋る。

「兵助の血の味はどうだ?」
 今までその様子を我関せずと雷蔵の隣で見ていた三郎が尋ねる。
「ふぃのあびだな、ふふうの」
 「血の味だな普通の」と言っているのだろう。

「勘右衛門。さっさと口から出せ」
「はいはい。中々の味だった。甘味じゃないけど。やっぱり自分の血とは味が違うんだな」
 兵助の言葉に応え、口から兵助の指を放し、そのまま指先に口先から空気を吹き付ける。乾燥させているのだろう。

「唾を付けるのは消毒になるけど、水で洗い流すのが一番いいんだからな」
 室内に戻り先ほどの兵助の横という定位置から事を見守っていた八左ヱ門から文句が上がる。傷をしょっちゅう拵《こしら》えている八左ヱ門は傷の処置には煩い。

「俺にも舐めさせろ。いいよな?」
 八左ヱ門は勘右衛門から兵助の手を奪うと兵助の返事を待たず人差し指を口に咥え、はじめはそっと舐めながら、段々と吸い始める。

「は、八左ヱ門っ……」
 兵助から擽《くすぐ》ったそうな、その中に官能の声が上がる。
「兵助……」
 そんな兵助を八左ヱ門は真剣な目で見つめる。

 兵助の声に反応するように、勘右衛門はもっと体を密着させ首筋へ舌を這わせ始める。
「八左ヱ門……勘右衛門……」

 五年生のこの五人は何かの切欠があると、寛ぎとは言い難いその先の接触へと進展する。
 今回は兵助の血だった。

 兵助と勘右衛門、八左ヱ門から聞こえ漏れる吐息と布擦れ音が聞こえ始める頃には、三郎は雷蔵の胸元へ手を差し入れ、雷蔵もまた三郎の胸元へ手を差し入れている。

 誰が切欠になるかわからない五人の交わりはいつ頃始まりいつ頃終わるとも知れず、しかし誰からも抑止のかからない五人の中での力学なのであろう。


 これ以降の詳しい目合ひに付いてはまたの機会にて。


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