2015/03/06
器
『彼女とかいるの?』―――こういう質問をそれほど親しいわけでもなくだからと言って他人でもない人から浴びせられることは多いだろう。もちろんこれは質問される側が男であった場合で、女の場合は『彼氏とかいるの?』となる。
単なる好奇心なのか、何かの世間話のつもりなのか、はたまた嫌らしい下心があってのことか。いずれにしても何ら進展性のない質問であり、質問者の知的階層が露呈してしまう話である。
昨日の大地は更にその前の大地が作り出したもので、今日の大地もずっと前の大地が作り出したものである。
知的階層も積み重なりで、今まで生きてきた積み重ねがなんの気なしの言葉に現れるのである。
「いますよ」
そしてそういう質問にはこう答えるのである。それ以上の質問があったとしても、「それ以上はちょっと……」と言えばいいだけの話である。
このような質問をしてくる人間の知的階層に合わせればいい。相手の好奇心なり世間話なり下心なりを満たしてやればいいのである。
器を超えたものを器に注ぐことはできない。
器を満たせばそれ以上のことはない。
精々他人の心配を。精々好奇心を満たすこと。精々欲望を満たすこと。
何れはどんな人もいなくなるものである。
いなくなった人は大地に還るのみである。