最近の作画環境

最近はもっぱらペンタブレットでデジタル作画をしているのですが、以前まで液晶タブレット的に使っていた Z300CL は殆ど作画に使わなくなってしまいました。

液晶タブレットは確かにポイントしたところに線が引かれるので直感的でわかりやすく、液晶画面にはペーパーライクフィルムを貼っているので紙に描いている感覚と変わらない部分はとてもいいです。
しかしこれも散々ペンタブレットと液晶タブレットとの比較で言われていることですが、液晶タブレットは紙に描いているのと同じ感覚で描ける代わりに手描きと同じ欠点があります。

それは「手で作画領域が隠れる」という根本的問題です。もちろんこれは紙に描いているように描ける液晶タブレットの特徴でもあるので仕方がない部分でもあるのですが、私はデジタル作画をしだしたのがまだ液晶タブレットが世の中に出てくる前で、割と長くペンタブレットを使っていたのでこれは割と気になる問題なのです。

例えば文章を手書きではなく、キーボードとエディタで打った場合、もちろん画面上にキーボードは出ませんしタッチタイプができる人であれば、キーボードが視界に入ることもありません。
これが携帯端末で一般的に使われる静電容量式タッチパネルにフリック入力ではテキストの近くに自分の手が見えますし、もちろんフリック入力エリアも視界に入ります。長らくタッチタイプによるキーボード入力を行っている人間にこの状態で長文を打てと言われたら大変なストレスになることは想像できるでしょう。

ラフを描くという全体を見ながら直感的に進めたい作業の場合は、手が作業環境で隠れるという根本的問題を除いても液晶タブレットには紙と同じ感覚である一覽性と直観性が備わっているのでいいのですが、それ以降の作業では寧ろ作業環境が隠れるということのデメリットのほうが大きくなると個人的には思ってしまいました。
これは前述したように、私が液晶タブレットの前にペンタブレットでデジタル作画を始めたという部分も多分に影響していると思います。

これは先のキーボードに例えると、デジタルで文章を作るのを QWERTYキーボードで始めたかスマートフォンでのフリック入力で始めたかで、キーボードとタッチ入力のどちらがいいかというようなものと重なってくる部分もあるように思います。

そしてもう一つには姿勢の問題があります。ペンタブレットでの作画の場合、ペンタブレットはどこに置いてもいいわけですからもちろん手元に置いて、作画表示エリアである液晶モニターは段差を付けた机の上に垂直に立てて目線とほぼ水平になる位置に配置できます。姿勢としてはタッチタイプで文章入力をしている状況と変わらないので長時間作業をしても楽です。

これが液晶タブレットになると、作画領域=表示領域なので、液晶タブレットを手元に置く必要があり、もちろん垂直に立てるなどということは人間の姿勢的にできません。
しかし、液晶タブレットには画面の回転や作画領域の拡大縮小がものすごく直感的にできるので、紙に描くことにストレスを感じない描き方をしている人には理想的な作画環境だと思いますし、実際私もそれはペンタブレットには真似ができないと思っています。

年始からずっと出茂鹿を描いているのも液晶モニターにペンタブレットなのですが、画面の回転や作画領域の拡大縮小のときにストレスを感じるくらいで目も楽ですし、デジタル作画には液晶タブレットがいいという昨今の流行には疑問を持っています。
これは私が老眼になってしまって近くのものが見にくくなったというのも関係しているので、若い人は直感的な液晶タブレットで慣れるのもいいとは思いますが、ペンタブレットも QWERTYキーボードと同じようにかけがえのないよさがあるということを最近実感しています。

ペンタブレットが QWERTYキーボードと同じようなよさがあるというのは本当に慣れが必要ということも同じだし、タッチタイプと同じように手元をまったく見ずに描けるようになるまでに時間がかかるという点も同じなので、逆に私が QWERTYキーボードが大好きなのとペンタブレットに出戻ったというのは根本的には同じ問題なのかもしれません。私はキーボードもタッチタイプなのでね……。

上記の動画などは非常にわかりやすく液晶タブレットとペンタブレットそれぞれのメリット・デメリットが示されていて参考になります。どちらも併用するというのがベスト解だと思いますが、今のところは私はペンタブレットに出戻ってしまいました。

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