2012/12/13
冬の夕方は鍋の予感 ※未完
「夕方って、なんか寂しいじゃないか……」
「寂しい?」
「明日のことを考えないといけないっていうか、「黄昏時」っていうくらいだし」
「『黄昏時』といえばさ、誰《た》そ彼《かれ》時って言うくらいだから、人の見分けもつかなくなって寂しくなるのかもしれないな」
「昔はそれだけ暗かったということなのかもな。今でも街灯のないところだとそうなのかもしれないけど」
そんな栓ないことを言いながら、コントラストがはっきりしてきたピンと張った冬空の下を白い息を吐きながら二人歩いている。大昔は黄昏時なんて怖さしかなかっただろう。もし次の朝が来なかったらどうしよう、などと考えなかったのだろうか。
今は誰でも、地球の自転によって太陽と反対側に自分の立っている地点が移動したのだとわかるけど……。これもわかると言ったって、五〇〇メートル毎秒で地球が自転していると言われてもピンと来ないし、そんな速度で回転しているものの上に常に自分が立っているなどと考えることもあまりない。
夕方ってそういう、いつも考えていないことを考えさせてくれる、きっかけなのかもしれないな……と寒空の下思う。
「……鍋、だな」
「鍋……?」
「寒いし……」
「熱いものって実は身体には良くないらしいぞ」
「マジ?」
「よくわかんないけど、食道に悪いんだって」
「鍋、やめようか」
「いや、鍋でいい。寒い時は鍋だ」
「どっちやねん」
そう笑いあった夕焼けに、明日も晴れの予感がする。