2013/06/28
「元」村
所謂平成の大合併で「村」が消滅した。
市町村の廃置分合。自治体の財政力強化、生活圏の広域化。
様々な名目のために「村」がなくなってしまった。
村であることに誇りを持っていたわけでも、村自体に愛着があったわけでもない。
しかしながら、村を除いた「村名」そのものには、昔ながらの愛着とすら呼べる感情もあったのだ。
それも、合併をすれば、どちらも顔も立てて名前も合併することもあれば、元々吸収する側の名前が維持されることもある。
なくなってしまってからじたばたしてもしかたがないが、村の名前は過去のものとなってしまった。
「元」村である。
だからといって、いつも見る景色が変わるわけでも、いつも行く馴染みの店の何かが変わるわけでもない。
ただ、ふと見る住所に、かつて見た文字はどこにもない。
それだけが寂しい。
しかし、そういう私も少しすればこの「元」村から出て行ってしまう。
多くの人がそうなのかもしれないが、様々な理由での転居である。
行く先は、元々村でもなく、長らく「市」を続けている歴史のある街である。
いつか、「元」村も同じようにその歴史を刻み、元の名前も誰もかれも忘れ去ってしまうのかもしれない。
その中に私も入ってしまうのではないか、ということが寂しいのである。